矢川工房は「工房」と名付けたくらいなので、何か形のあるモノも作る場所と位置づけています。しかし、場所柄、また建物の性質からいって、大型の工具を使う場所としては適していません。そこで電子工作や3Dプリンタ造形くらいができる場所作りを目指してきました。ただし、世間のニーズはまだそれほど盛り上がりを見せておらず、加えて元来ソフトウェア畑出身の私自身もなかなか一歩を踏み出せず、半田ごても3Dプリンタも稼働率はずっと低迷したままです。
しかし、全く使わないと機械も、せっかく職業訓練校で習ったことも劣化していくので、「迫られる必要」をわざわざ作ったりしながら、細々とモノづくりの練習をしています。
今回は、矢川工房で一番重要な設備であるホワイトボード、と2番目に重要な設備であるプロジェクタ、の使い勝手をよくするために、プロジェクタにつながっているHDMI切替器と、HDMI切替器につながっているApple TVを、ホワイトボードの下に置くための棚を作る「必要に迫れれている」ことにしました。まぁ実際、赤外線リモンコンを、見ているホワイトボードではなく、機器を置いてある自分の背後に向けて操作するという格好の悪さにストレスも感じていたので、「必要に迫られていた」と言えなくもありません。
さっそく最初のアイデアをモデルにしてみました。最初は、あまり深く考えず単純なL字型にし、中身の隙間なく3Dプリンタで出力してみました。結果、必要以上に頑丈のものができましたが、試しに付けてみたら棚板が想定よりも手前にはみ出し、ホワイトボードの前に立つ時にじゃまになる失敗作。結構な時間をかけて出力したのに情けない。深く考えなかったことが、当然ですがアダとなりました。
気を取り直し、次のモデルはしっかりと採寸して、棚板が奥に引っ込むように形状を工夫し、ガタガタしないよう取り付け用のネジ穴もつけました。強度はそれほど必要ないこともわかったので、充填密度は半分ほどにし、同時に2個出力して時間を節約しました。
これはなかなかいい感じにできあがり、ほぼ当初の考えどおりの棚ができたと思います。形をあれこれ考えるのには結構時間を要しますが、アイデアが固まればモデル作成に1時間、3Dプリンタ出力に6時間程度と、ぴったりサイズのモノが手に入る満足感を得られるのならば、悪くない投資と思います。
2Dプリンタの年賀状印刷のようなキラーアプリがなかなか現れないこともあって、家庭向け3Dプリンタはいまいち盛り上がらないでいます。やはりまずニーズ、次にアイデアとモデルがあって初めて「実際に作ってみよう」ということなのだろうと、今回改めて感じました。ぴったりサイズのものというのは、どこかのオンライン家具ショップでも謳っているので、基本的なニーズなのだろうと思います。家庭向け3Dプリンタで作ることのできるぴったりサイズのモノとしてどのようなニーズがあるのか、モデル化するにあたってどんなノウハウが必要なのか、試行錯誤しながら探っていきたいと思います。