もうちょっと教えて! ITワード「クラウドの五段活用」

 最近はテレビのCMでも耳にする「クラウド」、なんのことかさっぱり分からない。でも、スマホをお持ちのあなたは既に「クラウド初段」です。試しに「Siri」や「OK Google」などの音声アシスタントに「ここはどこ?」と話しかけてみましょう。音声アシスタントの作りによって異なりますが、手元のスマホとクラウドのやり取りは、大まかにこんな具合です。

 あなたの声はマイクを通って音波のままクラウドに届き、文章に変換され意味を解釈されてスマホに戻ってきます。スマホは文章を表示しつつ意味から動作を判定して、今いるスマホの位置情報(緯度と経度)を渡すから地図をよこせ、とクラウドに要求します。クラウドはドンピシャの地図と住所をスマホに送ってきます。

 このように、手元のスマホと連携しインターネットを通じて高度な情報サービスを提供する仕組みがクラウドです。様々な機能をサービスとして提供するので、よく「○○ as a Service(アズアサービス)」などと呼ばれ、「○○」の部分で分類されています。そこで、国立せいさく所の独自視点で、主なクラウドサービスをクラウド活用の「段位」として表にまとめてみました。

段位 技術 利用例
クラウド初段 mBaaS
(mobile Backend as a Service)
現在地の表示、音声アシスタンス、通知などを行う様々なスマホアプリ
クラウド二段 SaaS
(Software as a Service)
ファイルや写真の保管・分類・共有、名刺管理、オフィス文書作成、印刷、SNS
クラウド三段 DaaS
(Desktop as a Service)
スマホやタブレットが高性能なPCに変身
クラウド四段 mBaaS、PaaS
(Platform as a Service)
スマホアプリ開発、サーバ側のソフトウェア開発
クラウド五段 IaaS
(Infrastructure as a Service)
会社の情報システムをレンタル感覚で丸ごと構築

 

 クラウド二段、SaaSは、スマホやPCにソフトウェア(アプリ)をインストールする代わりに、同等の機能をインターネットブラウザさえあれば使えるようにするサービスです。ファイルや写真の保管、管理などがよく知られていますが、保管するだけでなく、ファイルの中身や写っている被写体で自動的に分類したり、インターネットの特徴を活かした共有や同期という仕組みで、より便利に使えるように工夫されています。また、インターネットブラウザよりも簡単に操作できる専用のアプリを提供しているサービスもあります。これらのアプリはインターネットを通じてSaaSに接続していなければ利用できません。

 クラウド三段、DaaSは個々のソフトウェアではなくPCを丸ごとサービスしましょう、というものです。スマホであれタブレットであれインターネットブラウザがあればそれがあなたのPCになります。今までお使いのPCと同じで、追加でアプリをインストールしたり、自分でプログラムを開発することも可能です。一方、突然停止したり、おかしな添付ファイルを開けばコンピュータウィルスに感染することも、今までお使いのPCと同じです。

 クラウド四段、PaaSはアプリを作りSaaSを提供する人のためのサービスです。mBaaSも四段では開発者として利用します。一段、二段が教えられた技を磨く人の段位だとすると、四段は更に新たな技を生み出す人の段位と例えることができます。

 クラウド五段、IaaSは会社のIT部門のためのサービスです。仮想化技術によってハードウェアの機能をサービスとして提供しているので、会社にはサーバやPCを一切置かない、繁忙期のみサーバの能力を増強する、丸ごと移転、コピーといった柔軟な運用が容易です。災害時の事業継続性の点でも注目されています。

 では、これら多様なサービスを提供するクラウドは、いったい何処にどのような形で存在しているのでしょう?

 実はそれが雲(Cloud)を掴むような話で、答えられないのです。昨日は大阪、今日はネバダの砂漠、という可能性もないとは言えません。ちょっと不安に思われるかもしれませんが、知られていないからこそ安全な面もあります。クラウドサービス会社は強固なセキュリティや何重ものバックアップで安全性を保っています。

 一つだけ不安を挙げるとすれば、スマホをお持ちでクラウド初段である、まさに「あなた」から、大切なパスワードが漏れること。

 クラウドサービスの利用に欠かせない、IDとパスワードの違いについて、次回、詳しく解説する予定です。